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釧路家庭裁判所帯広支部 昭和48年(少)192号 決定 1973年5月21日

少年 N・S子(昭三五・一・一生)

主文

この事件を北海道帯広児童相談所長に送致する。

理由

本件送致事実は司法警察員作成の送致書記載のとおりであるが、調査の結果によれば少年は昭和三五年一月一日生れで現在なお一四歳未満であることが認められるところ、本件は少年法三条二項所定の送致手続によるものではなく、司法警察員から家庭裁判所に送致されたものであるから、当裁判所は少年に対し審判権を有しない。

ところで審判開始前に裁判所が審判権を有しないことが判明した場合、管轄違の場合や本人が二〇歳以上の場合等の例外を除いて審判不開始決定により事件を終結させるのが原則である。しかしながら本件のように一四歳未満の少年について少年法三条二項所定の送致手続を欠く場合、審判不開始決定をもつて事件を終結させるのみでは、少年の保護育成の目的が達されないときがあることは明らかであり、たとえ調査官等による児童福祉法二五条所定の通告を活用しても少年の保護に空白が生ずる可能性があるのに対し、前記のような場合に都道府県知事または児童相談所長に事件を送致すれば、少年の保護に空白を生ぜず、記録の引継ぎの面でも便宜である。このことと、本人が二〇歳以上で裁判所が審判権を有しない事件について検察官送致すべき旨を定める、少年法一九条二項や少年が一四歳未満で同法三条二項の送致手続を欠くためまたは本人が二〇歳以上であるため審判権を有しない裁判所がなした保護処分を後に取消した場合に同法一八条一項および一九条二項の準用を認める同法二七条の二の三項の規定の趣旨とを考えあわせると、同法一八条一項は文理的には裁判所が実体審理のうえ児童福祉法所定の処遇をなすことが相当であると判断した場合に都道府県知事または児童相談所長に送致すべき旨の規定ではあるが、本件のように一四歳未満の少年につき少年法三条二項所定の送致手続きを欠くために審判条件を欠くときに形式的裁判として都道府県知事または児童相談所長に送致することもできるとの趣旨を含むものと解するのが相当である。

よつて本件を少年法一八条一項により北海道帯広児童相談所長に送致することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 西田美昭)

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